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2008/02/14

市川崑監督、逝く

2008年2月13日。
日本映画界の巨匠、市川崑監督が亡くなられました。
90歳を過ぎてもなお旺盛な製作意欲をみせ、その情熱からみせる壮健さから、「まだまだ新しい作品が観られる」ものだと期待しておりました。しかし、ご高齢でしたので、「もしも・・・」の覚悟も心の隅には確かにあったのですが。。。

ついに、お別れの時を迎えてしまいました。

子どもの頃から、私の心を今でも捉えて離さない“金田一シリーズ”。
奥様の和田夏十さんと手がけられた筋書きもさることながら、市川作品が醸し出す独特の映像世界は、戦前~戦中~戦後を生き抜いた人間でなければ描けないリアリティと重厚さがあり、金田一シリーズの映像は、その最たるものでした。

もうひとつ、子どもの頃好きだった『木枯らし紋次郎』。
大衆娯楽ドラマでありながら、軽いチャンバラ剣劇ではなく、飾りのない実にリアルな殺陣と映像描写が当時話題を呼んだものです(この流れで映画『股旅』映画を製作、共同脚本が谷川俊太郎)。

かたや。
数多くの文学作品を映画化しつつ、そうかと思えば、「記録映画を超えた芸術映画(?)」で論争を呼んだ『東京オリンピック』を手がけたり、『竹取物語』のようなSF映画を作ってみたり、ムツゴロウ先生・畑正憲と『子猫物語』を監督したり、黒鉄ヒロシのマンガ『新選組』を紙人形で撮ったりと・・・
「この監督の作風は、これ」
と形容し難い、これほど多彩でつかみどころのない映画監督はそうそういないのではないでしょうか。
そんな才能を敬愛・崇拝するファンは数知れず、、、最近では映像美で知られる鬼才・岩井俊二監督が『市川崑物語』という映画を製作したほどです(先日、見逃してしまい残念)。
※2/17追記:
嬉しいことに、スカパー!が2/24(日)に放映を決めてくれました!
『市川崑物語』に引き続き、『犬神家の一族 2006』も連続放送されます。

昨年、新都心のMOVIXで観たセルフリメイク版『犬神家の一族』、これが遺作となってしまいました。さらにこの映画が封切られる前に、ロケ地となった上田の北国街道を訪れたのも、今にして思えばなんという偶然だったのでしょう。

そして、昨年秋にスカパーやNHK-BSで市川崑特集が組まれて集中放映されていたのも、何かしらの“暗示”だったのでしょうか(こちらは幸運にも、鑑賞できました)。

日本の映画界は、計り知れない喪失感に包まれていることでしょう。
ファンとしては、本当に残念で寂しい限りです。
謹んで、市川崑監督のご冥福をお祈り申し上げます。

さらば、昭和のアバンギャルド。

※2/17追記:
昨夜、BS朝日で『どら平太』(2000年)を久々に観ました。
山本周五郎の『町奉行日記』を黒澤明、木下恵介、小林正樹、そして市川崑の“四騎の会”で共同企画・脚本化したものの頓挫し、約30年の年月を経て市川崑のメガホンによってようやく映画化が実現した作品です。
80歳代半ばの作品とは到底思えない、モダンでスタイリッシュな作風にあらためて感服。
役所広司が・・・カッコ良すぎて困ります(笑)。

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コメント

おはようございます。
「子猫物語」はサウンドトラックが坂本龍一さんでした!
ムツゴロウさんばかりが印象に残っていましたが市川崑監督だったのですね。
改めて子猫物語をもう一度みてみたいと思います。
テーマソングが可愛い唄ですので聴いてみてください。

投稿: なかじま | 2008/02/17 05:17

@なかじまさま
「チャトラン」は映画館で封切りで観ました(友達の付き合いで行ったような・・・)。坂本龍一が音楽担当だったこと、小泉KYON×2が谷川俊太郎の詩を朗読したことが当時話題となりましたね。
もちろん、テーマソングは聴いたことがありますよ。可愛らしい曲ですよね。

投稿: nigoe | 2008/02/17 17:34

市川監督から話はそれてしまいますが・・・

役所広司さんが出演していたバベルとシルク、両方とも音楽が坂本龍一さんなんです。
バベルもクライマックスのシーンで坂本龍一さんの「美貌の青空(バイオリン+ピアノ+チェロのトリオバージョン)」が流れて、映像とあいまって涙腺がうるうるきます。
シルクは全編坂本さんの曲でこちらもお薦めです。
両作品とも役所広司さんがかっこよくて憧れます。

で、役所広司さんて役者さんになる前は「お役所」で土木「工事」の積算をされていたとか?
それで芸名を役所・広司にしたという都市伝説のような噂を聴きました。
お役所の方がこんなかっこいい方だったら打ち合わせもウキウキしてしまうかも!!

失礼いたしました。おやすみなさい!!

投稿: なかじま | 2008/02/19 00:27

五輪会場、通称鳥の巣の視察からただいま帰りました。
旧正月とあって青空いっぱいでしたよ。地元の方は8月は最も暑い時期、
死人が出なけりゃいいが、と心配していました。
お出かけの方は防暑(んっ?)対策を充分に…。
私は防寒対策を充分にして行きましたので凍死しませんでした(^^;;

投稿: なごやのじーじ | 2008/02/19 22:13

仕事が立て込んでしばらく更新しない間に、掲示板化してきたこちら中年バンザイです、みなさまごきげんよう(笑)

@なかじまさま
役所広司が公務員だったのは本当です。千代田区役所の土木関係の部署で働いていたと、昔TVで本人が話していました(徹子の部屋だったか?)。

また、映画『シルク』のストーリーですが、日本が明治維新前後の頃、フランスで蚕の病気が流行し、それをきっかけに良質の絹が生産可能な日本に生産拠点を移した、と、富岡製糸場で説明を受けました。
参考:
http://www2.city.tomioka.lg.jp/worldheritage/outline/index.htm
映画化されると、より実感が湧きますね。

@なごやのじーじさま
おかえりなさいませ。無事のご帰国、安心いたしました。
行かれたのは「鳥の巣」だけですか?今話題の重慶には?(^^;
そう言えば、うちの近所の餃子屋さん(中国人経営)も、お店休んで正月帰省していました。さぞにぎやかだったでしょうね。

投稿: nigoe | 2008/02/20 15:18

邦画無知の私(と言っても洋画に詳しいわけでも全然ないのですけど)、市川監督の作品にもあまり縁がありませんでした。こちらを拝読して「それでは日本人としていかがなものか!」と思っていたところ遺作となった「犬神家の一族2006」が地上波で放映されたので、怖さを堪えて観ました!(怖い映画苦手なんですー!)

・・思いのほか楽しみました。nigoe様絶賛のわけが分かりました。実にスタイリッシュなのでありますね。やっぱりスゴク怖かったですが。ぶるぶる(+_+)

「昭和のアバンギャルド」に合掌。

投稿: あん | 2008/02/20 16:10

@あんさま
『犬神家の一族』ご覧いただけて何よりでした。前作に比べ映像技術が良すぎるためやや画質が平板的な印象ですが、ストーリーはほぼトレースされています(地上波のためか一部カットされてた模様ですが)。しかしあれが90歳の感性で描いた作品ですから驚くばかりです。
私もオカルトは苦手なんですが、『犬神家・・・』はまだマシな方で、金田一シリーズは、陰惨なお話が多く、たぶん地上波では放映できない内容が多いと思います。『病院坂の首縊りの家』はその最たる話で、『八つ墓村』に至ってはもはやお化け屋敷です(笑)
それに比べれば、『どら平太』は大衆娯楽映画として楽しめます。役所広司が大人のご婦人のハートをグイッとわしづかみ(笑)。
「『どら平太』みたいな男いるわけないでしょ!」と言いたくなるくらいカッコイイですよ。

投稿: nigoe | 2008/02/21 00:05

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