08【AWAY】第12節@川崎戦
試合後の帰り道、仲間がぽつりとつぶやいた。
「まるで決闘みたいな試合だった-------」と。
予想していた“殴り合い”ではなく、“睨み合い”そして“せめぎ合い”の、手に汗握り息詰まる、緊張の90分。相手の行く手をことごとく阻み阻まれる。ずぶ濡れの選手、滑るピッチに高まる疲労・・・どこかで見た映画のシーンを彷彿とさせる、「雨中の決闘」のような一戦だった。
冷たい春雨降りしきる等々力。早朝から列を成して我慢強く並ぶ人々。時折止んだかに思えた雨は、開場時刻が近づくにつれ雨足が強くなる。入場後もさらにしとしとと飽くことなく降り続き、止む気配のない空に期待するのをあきらめた。
ピッチと選手を濡らす雨、アウェイ、そして相手は破壊的な攻撃力を擁してここ2,3年リーグを席巻する、川崎。決して万全とは言えない浦和の現状を鑑みると、天候を理由にせずとも厳しい戦いになることは容易に想像できた。
『日替わり定食』のような今節の浦和スタメンは、前節の永井に代えて細貝をボランチ先発、そして前節望外にも機能した(笑)暢久を右サイドに、、、これは対面の山岸対策とうかがえた。そして、ウォームアップ中にも腕の上がらぬ様子だった闘莉王が強行出場。接近戦を得意とする川崎に対し、これが吉と出るのか凶と出るのか・・・。かたやサブに登録されたユース・高橋の名が京都戦の折の山田直同様、そう遠くない未来への新たな期待を抱かせてくれている。
対する川崎も、フッキの衝撃的な離脱と移籍したマギヌンによりプラン変更を余儀なくされたが、ここ数試合で徐々にチーム状態は上向き。新人の菊池(浦和東高出)がやる気満々の先発。しかし、警戒していた森の名がサブにも無かった(膝痛により急遽欠場と後日判明)。
そして皮肉なことに、両チームとも“今シーズン2代目監督”の対戦。紆余曲折を経たチーム同士、どのような采配を持って互いに挑むのかに興味は注がれた。
降り止まぬ雨の中、試合開始。よほど慎重になったのか、両陣営とも守備の意識が序盤から高い。コンパクトに絞りあった中盤でボールを取ったり取られたり、、、まるでギシギシと軋む音がするような攻防に、両軍譲らずの展開。たっぷりと水を含んだピッチ、次第に濡れて重みを増すユニフォーム、雨に遮られる視界・・・それらが手枷足枷のようにミスを誘う。そのミスを互いに狙い合い、そして狙われては取り返しにいく。川崎が前線へのロングボールで浦和DFの裏を狙いFWを走らせるようになると、や
がて少しずつ“縦波”がピッチに生み出される。互いに押したり押し戻したりと揺れながらも、しかしなかなか波が彼岸まで打ち寄せることが出来ない。打ち寄せようとしても、波頭は到達する前に飛沫と化す。水槽の中の水を揺らすように、発散されずに行き場を失ったエネルギーが内部に籠もってしまうようなさまに見えた。
どちらもやりにくそうな様子が見ていてもわかった。「相手の好きにさせない」ように、双方の指揮官は相手をよく研究していた。浦和においては、普段サイドで上がりっぱなしになりがちな相馬までもが、自陣ゴール前まで戻りマーク相手に食い下がってクリアしていたほどであり、組織としての守備戦術が徹底されていたようだった。
そして心配された闘莉王は、やはり空中戦だけでなく接触プレーでも競ることができない。走ろうにも痛みで思うままにならないようで、専ら玉捌きに専念。ボランチという肉体的に厳しいポジションにもかかわらず、指揮官が彼を敢えて強行出場させたのは、「ボランチ闘莉王」の脅威を川崎側に与えるための抑止力と、彼の闘争心でチームを奮い立たせること、そしてこの日運悪く負っているハンディを差し引いてでも余りあるスキルの高さを買ってのことだったのだろう。それにしても、、、競り合いを避ける度に、そしてチャージの度にピッチに倒れ込む闘莉王の姿に何度肝を冷やしたことか。そんな状況に容赦をするような相手ではないし、それ以前にピッチに立つからには“手加減”などということは許されない状況であることは誰もが承知しているはずだろうに。
油断ならない攻防と、手負いの闘莉王のプレーに気を抜けないまま、あっという間に前半終了の笛が鳴った。
前半をふと振り返ると・・・すでに双方の警告数が「3」。主審は“ミスター・レッドカード”の異名を持つ。嵐の予感の中、後半開始。
失点を警戒する浦和は、依然守備意識が高い。FWも前線から積極的にチェックをかけ、その背後のスペースはゾーンの網でがっちり埋められていた。その集中した守備の引き換えとして、攻撃時の枚数が不足。シュートシーンの少なさに気付きだしたのはこの頃からだろうか。いくら守備が堅牢であろうとも、散発的な攻撃では勝機はない。これだけ双方の守備が大崩れする気配のない試合展開となれば、『1点勝負』の公算が高くなる。浦和は先取点を取らなければ勝機が俄然遠のいて行きそうな・・・そんな予感が頭をよぎった。
後半十数分ごろまで両軍シュートも無く時が過ぎるも、何故かその間の黄紙は2枚発行。接触プレーの連発でつのる苛立ち、焦り、、、
その心理状態がきっかけになったのか、ついに戦況は膠着状態から解き放たれた。闘莉王のトリッキーなヒールパスが「来ると信じて」猛然と走り込んだ高原に対し、反応した井川が若干背後横からPAライン外ギリギリのところでボールをクリアする体勢に入った・・・確かにボールはクリアするも、その次の「決定的な」動きが主審の目に止まったようだ。一見微妙な状況に見えるものの、スライディングした両足は上がり、PA内で高原の足にかかっていた。さらに補足すれば、その時高原は、井川にクリアされていたPA内のボールを追っており、別の観点で論ずれば、不可抗力としてもPA内で足が上がってそれが相手の足にかかった時点で「李下に冠を正さず」の喩えのとおり、井川のバックチャージ&得点機会阻止の“一発退場”の沙汰も考えられたところ(ビデオをスロー再生すれば、一連の動きはわかります)、主審は井川に対し警告を宣告し、浦和にPKが与えられた。これをエジが手堅く決め、喉から手が出るほど欲しかった先制点をゲット。苦しい展開から一瞬開放され、沸き立つ浦和ベンチとアウェイ側スタンド。
しかし、まだ後半17分。あと30分もある。
一気呵成に反攻を仕掛ける川崎。それを阻止する浦和との厳しい攻防のなかで、これまでにも散見された「ファウル判定のばらつき」に、嫌な予感がよぎる。その現実はすぐに訪れた。反則を取って貰いたいプレーで取って貰えず、次の似たようなプレーでは皮肉にも反則を取られた浦和右サイドで川崎ボールとなった次の瞬間、ロングボールが供給され、中央ポストのチョン・テセがうまく落としたところにジュニーニョが強烈なシュート。都築が正面で捉えて事無きを得たが、これが「前ぶれ」になろうとは。都築のフィードから間もなく川崎ボールとなり、浦和の「引き過ぎ」の守備陣形は、今し方の同じような場所から中村憲のファーサイドへの山岸へロングクロスを許す。それを山岸が頭で落とし、中央の村上がシュート→堀之内クリア→村上再シュート→都築に当たったボールを右から詰めた谷口がゴールに押し込んだ・・・が、これがオフサイド。
当然、現場のアウェイゴール裏の位置で観た限りでは、判定の確証は持てない。帰宅して録画を何度見直しても良くわからない微妙な判定。谷口のシュート時、(暢久はエンドライン付近にいたので)仮に都築の位置がオフサイドラインであったとしても、走り込んで来た谷口がボールに触った時点がオフサイドであったと判断するにはいささか厳しい判定。しかし副審は自信を持ってフラッグを出していた。TVの放送画面では判定不能であり、どの時点で判断が下されたのか・・・谷口ではなく山岸のポジションだったのか?(最初の中村憲からのクロスを受けた時点なのか、それともその後の立ち位置を「攻撃関与の可能性アリ」と判断されたのか、等々)・・・副審本人から話を聞かない限り「真相は藪の中」。後味の悪さは残るものの、判定結果は覆らない。川崎には気の毒だと思うが、浦和が辛くもピンチを回避でき、胸をなで下ろしたのは正直なところ。
そこからの浦和は、気合いが入ったのか、全員が「守備の鬼」と化した。
選手全体のカバーリングの意識が浸透しており、特に最後尾を統率する阿部の読み、カバーの精度の高さが素晴らしい。昨季のACLでの戦いを彷彿とさせる、全員の守備への高い集中力。アントニオ猪木の風車理論ではないけれど、「相手が強いほど、持てる力を発揮する」のは、主将のみのクオリティに非ず(笑)。オフサイドの一件以降は川崎の攻撃から脅威は薄れ、かたや浦和は淡々と時間をやり過ごそうと「相手にボールを持たせ」たり、コーナーで時間を潰したり・・・される側にしてみれば堪らないプレーだが、「これもサッカー」。時間の経過とともに、守るも攻めるも疲労の色が濃くなっていくのが目に見えてわかった。最後は消耗戦と化した戦いに、やがて終止符を打つ笛の音が響いた。
結果、川崎12本のシュート数に対し、浦和はPK含め3本。後半はこのPK1本のみにとどまったシュートが、“一撃必殺”のものとなった。
固すぎて華々しいシーンに乏しい試合展開は、単調で興行的には歓迎されないものではあるけれど、意地と意地とをぶつけ合った硬派な『勝負』としては見ごたえ充分であると共に、観る者に緊迫感を与えてくれた意味では楽しませてくれたと思う。
それでも単調な試合内容に変わりはない。そんな状況に退屈さを覚えたのか、必要以上の波乱を演出したのは、この日の『判定』。得点に絡むシーンのみでなく、試合中に散見された判定基準のばらつき。さらに最後の暢久の遅延行為の判定にも、永井がボールを手放した瞬間から「見計らって(ある程度はそういう観点も必要であるけれど)」いるうえに、すでに主審の予定調和の中に組み込まれていた事象と思えなくもない。いわゆる『先入観』『思い込み』もっと穿った見方をすれば、両者の反則数のバランスを取ろうとした『帳尻合わせ』。しかし・・・相変わらず暢久は、スローインと相性が悪い(^^;
どちらのチームが疑惑の対象となろうとも、試合後に物議を醸す判定をされるのは、全くもって遺憾。判定により間接的な遺恨の対象となるのも甚だ迷惑な話。
しかし、レフェリングの内容も、サポーターの感情も、すべて含めた世界が『フットボール』。あれこれと思考を巡らせてみようが、現実は「勝ち」「負け」の、そういう至極簡単な世界ということなのだろう。
Pride of URAWA------「絶対に勝たせたい」という思いが、封印を解く力となった。
ピッチの上では何が起こるかわからない。しかし、選手を支えたいというこの思いが真実であれば、それでいい。
このフットボールの世界で私たちができることは、それだけなのだから。
【2008 J第12節 5月10日(土)14:05 KICK OFF】 会場:等々力陸上競技場 観衆:20,335人 天候:雨 |
おまけ:
いつもながら、アウェイ川崎@等々力は「試合以外」のネタが満載です(笑)。主なものを、以下ご紹介。
武蔵小杉駅に貼ってあったポスター。
私の世代で“赤壁”と聞けば、かの三国志の『赤壁の戦い』を連想。それにかけたコピーであることはわかるのですが、『赤壁の戦い』は、端的に言っていわゆる「一網打尽の戦い」を意味していると認識しております(以下、ご想像にお任せ)。
『川崎市民の歌』。
市民歌をビジョンで披露される、珍しい例(メロディは聞こえませんでしたが、流れていたのでしょうか?)。
その複雑な事情(?)のため、さいたま市市歌『希望(ゆめ)のまち』のビジョン掲出実践は難しいものがありそうです(^^;。
『席ツメTIME』発動。
新選組に扮したキャラクターによるキャンペーン映像が事前に流されて、この時点で荷物や物(ヒモ、テープ等)で抑えている席を『法度』として撤去する旨、観客に周知を図っていました(参考)。
「上の条々に背きし者は、『席ツメ隊』の裁きに遭うべし」
いつもながら、川崎の中の人の、こういう企画力とコピーの天才ぶりには感服させられます。この『隊』は要らないけど(笑)、席詰めの精神は見習いたいものです。
おまけ@その2:
昨年もそうでしたが、、、某テレビ局のカメラ位置取りには、何かしら既得権があるかのような、そんな「観客不在」を感じさせるものがあります。
参考までに、昨年のエントリの文末(追記箇所)に類似事例があります。
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